投稿者「海部 健三」のアーカイブ

ワシントン条約CoP17にてウナギ調査提案が採択されたことに寄せて

中央大学の海部健三です。2016年9月25日、南アフリカで開催されているCITES(通称ワシントン条約)の第17回締約国会議(CoP17)において、ニホンウナギを含む全ウナギ属魚類の資源管理や流通に関する調査を行うEUの提案が、全会一致で採択されました(NHK「おはよう日本」)。この件について、考えを記します。
なお、EU提案の内容ワシントン条約の意味ニホンウナギの置かれている状況については、過去の記事をご覧下さい。

調査提案の意味
今回、すでに附属書IIに掲載されているヨーロッパウナギをのぞく15種のウナギ属魚類を、附属書に追加する提案はありませんでした。提案され、採決されたのは、あくまで個体群サイズや消費、流通の現状に関する調査です。しかし、調査が提案されたことは、ウナギ属魚類の個体群動態や、消費、流通の状況が現状のままで良いと考えられてはいない、ということを示しています。調査の結果、やはり附属書に掲載し国際取引を規制する必要があると判断された場合は、おそらく2019年に開催される第18回締約国会議(CoP18)において、ウナギ属魚類全種の附属書への掲載が提案されることになるでしょう。(詳しくは過去の記事をご覧下さい)

ニホンウナギの資源管理の現状
ニホンウナギに関しては、個体群動態、消費と流通が調査の対象として考えられます。すでに個体群サイズの縮小が指摘されている本種において、最も大きな問題となるのは、消費に関して適切な資源管理がなされているのか、ということでしょう。現状においては、適切な資源管理がなされているとはいえません。2014年より日本、中国、韓国、台湾の4ヶ国は、養殖に用いるシラスウナギについて、養殖場に導入する量(池入れ量)の制限を開始しました。しかし、池入れ量の上限は科学的根拠に基づいておらず、本種の持続的利用を担保するものではありません。知見の不足によって科学的根拠に基づいた上限を設定できないのであれば、消費を削減する必要があります。現在ニホンウナギが減少しているということは、ニホンウナギの増える速度を消費する速度が上回っているということであり、持続的利用を達成するためには、消費量を削減する必要があるためです。しかし、現在の池入れ量の上限は、実際に捕獲できるシラスウナギの量を上回っており、消費を削減する効果を持ちません。つまるところ、ニホンウナギの資源管理は適切ではないどころか、実質的には、資源管理が行われていないのと同じ状態なのです。

ワシントン条約はベストの選択か?
「ワシントン条約はウナギの持続的利用に取って、ベストの選択ではない」という意見もあるかも知れません。これは、一部正しく、一部誤っています。ニホンウナギがワシントン条約によって規制されることになった場合、実質的には一切の国際的商取引が禁止されることになるでしょう(詳しくはこちらの記事)。このような柔軟性のない枠組みは、個体数の変動が大きいウナギのような動物の保護には向いていません。ある年、何らかの理由で急に個体数が増えたとしても、それを利用することができないためです。このため、ワシントン条約はウナギの持続的利用のためのベストの選択とはいえません。しかし、現状を見てみるとどうでしょうか。上記のように、ニホンウナギについては、実質的には全く資源管理が行われていないのと同じ状況です。科学的知見に基づいた池入れ制限も設定されず、消費の削減もなされていません。この現状を打破し、消費量を削減しようとする動きが、ワシントン条約による規制の動きです。他に方法がない現状では、柔軟性の欠落したワシントン条約でさえも、現実的な選択肢の中ではベストの選択といわざるを得ません。「ワシントン条約はベストではない」という主張は、ワシントン条約に変わる、現実的で、効果的な対案を伴う必要があります。そして、現在の池入れ制限がそのような対案にはなり得ないことは、明らかです。

ワシントン条約 による規制は「日本の食文化」を危機に陥れるのか?
9月26日朝に放送されたNHKの「おはよう日本」では、全国の養殖業者でつくる業界団体「全日本持続的養鰻機構」の村上寅美会長が、「3年後に開かれる次の会議で、ニホンウナギの国際取引の規制が提案される可能性があり、規制されれば、日本のウナギ業界は大打撃を受け、食文化も守れなくなる。イエローカードどころの話ではなく、本気で取り組まなければ大変なことになる」と話しています。ワシントン条約の規制によって、本当に日本の食文化が失われるのでしょうか。実際には、そのようなことはありません。例えば、2016年に日本の養殖場に入れられたシラスウナギの総量は19.7トン、このうち13.6トンが日本国内で漁獲されたシラスウナギで、残る6.1トンが輸入されたものとされています(水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」)。ワシントン条約が規制するのは国際取引のみですので、もし規制の対象になったとしても、今年の池入れ量の約7割は維持できた計算になります。13.6トンのシラスウナギを養殖し、重さが800倍になったとすると、10,880トンになります。現在の流通量である5万トン(2015年)と比較すると少なくなりますが、「文化を維持する」という視点から考えれば、十分な量ではないでしょうか。

ワシントン条約はチャンス
ウナギの減少は、1980年代には明らかであり、1990年代には国による調査も行われてきました。しかし、実質的な効果を持つ対策は行われないまま、現在に至ります。しかしここ数年間、関係各国での話し合いや水産庁、環境省による保全と持続的量を目指した調査など、様々な変化が現れています。これは、ウナギの現状に対する危機感から生まれているものでしょう。ワシントン条約による規制の可能性は、この危機感をさらに強くする効果をもたらしています。危機感が強まることによって、関係者が動き、社会が動き、これまで現実のものとならなかった、本当に効果的な対策を現実のものにできるのではないでしょうか。ワシントン条約を単なる外圧として避けようとせず、チャンスと捉えて正面から向き合うことで、より適切なウナギの資源管理方策を、現実のものにすることが、できるはずです。

2016年9月26日
海部健三

静岡県、次漁期からシラスウナギ流通規制強化(日刊 世界のウナギニュース2016年9月23日)

★静岡県、次漁期からシラスウナギ流通規制強化
静岡県がシラスウナギの不正所持に対する罰則を設ける。29日の県海区漁業調整委員会で罰則内容などについて協議が行われ、12月の次漁期から適用される見込み。県内で採捕されたシラスウナギは通常、漁業調整規則により県外への持ち出しが禁止されているが、非正規ルートでの高額取引が行われている事が問題となっている。
“ウナギ稚魚、流通透明化へ規制強化 静岡県、次漁期から” (静岡新聞@SBS、日本)
http://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/unagi/284318.html

★2020年までにウナギ稚魚の大規模養殖へ 水産庁
水産庁が2020年までにウナギの稚魚の大規模養殖を目指す。2017年度から民間の研究機関などと共同で、タンク内の浄化や水流の改良を行う。最初の目標は、生残率を4%へ引き上げ、稚魚の飼育期間を300日から180日に短縮、コスト削減だという。現在、水産教育・研究開発機構により静岡県の施設で孵化や養殖手法が開発されているが、実験環境下で孵化した個体が稚魚まで成長する割合は1.6%にとどまっている。
“Japan targets farm-raised eel fry by 2020” (Nikkei Asian Review、 日本)
http://asia.nikkei.com/Politics-Economy/Policy-Politics/Japan-targets-farm-raised-eel-fry-by-2020

“ウナギ稚魚、人工的に量産 20年までに水産庁” (日本経済新聞、日本)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO07526990S6A920C1NN1000/

 

★世界川の日 ニュージーランド、Webで意識向上ねらう
25日の世界川の日(World Rivers Day、山岡訳)では、各国で様々なイベントが開かれる。例えばニュージーランドの環境省、Cawthron研究所とで開設した、国内の天然資源の質や量のモニタリング・情報サイトLand, Air, Water, Aotearoa (LAWA)ではBay of Plenty広域自治体による最新の河川や沿岸の水質やモニタリング結果が公表され、自治体では、サイト掲載により、(一般の人の)意識向上や水質問題の理解促進を図る。LAWAも独自に、国内の河川で行われた保全活動を紹介する動画を公開する。World Rivers Dayは2005年から始まり、河川の価値の再確認や社会の意識向上を推進する日として、60か国以上の国が参加している。
“Council celebrates World Rivers Day” (Scoop Regional, NZ)
http://www.scoop.co.nz/stories/AK1609/S00755/council-celebrates-world-rivers-day.htm
World Rivers Day公式サイト:http://worldriversday.com/

「日刊 世界のウナギニュース」は 平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。

効果的な放流種法検討事業 静岡で調査(日刊 世界のウナギニュース2016年9月21日)

★効果的な放流種法検討事業 静岡で調査
16日までに静岡県静岡市の波多打川で中央大学らにより、ウナギの放流に適した河川の条件を探るための調査が行われた。調査は河口から4-5kmの区間で10か所行われ、計11匹のウナギが捕獲された。研究チームは河川に成育する他の水生生物などに関するデータも収集し、生態系と放流との関連について、同様の調査を青森、福井、鹿児島件で行っている。
“ウナギ放流の効果的条件探る 静岡の河川など全国調査” (静岡新聞@SBS、日本)
http://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/unagi/282654.html

★EU出資、IMPRESS 淡水生物の保全管理のための研究活動中
EUが出資する、絶滅のおそれのある淡水生物の保全管理のためのトレーニングネットワーク(IMPRESS)には、トップの研究者や博士課程の学生らが所属しており、科学的根拠に基づいて、精力的に活動している。例えば、学生が、回遊魚の移動を妨げているとされるダムの管理者に対し水口の開放やダムの改修を求めたり、チョウザメの密漁が盛んな地域では、適切な情報を地元の漁業者に提供することで、反対の視点をもつ漁業者と保護活動家が歩み寄れるような方法を考案したりしている。また、研究者による革新的な養殖方法を通して、放流手法の改善も試みられているという。
“Endangered Waters: saving Europe’s most iconic fish species” (EuroScientist, FR)
http://www.euroscientist.com/endangered-waters-saving-europes-most-iconic-fish-species/#ixzz4KtTbmkQF

★ウナギにやさしいポンプステーション イギリス
イギリス東部のサウスホーランド地区のDonningtonsポンプステーションのポン
プが、ウナギ等の魚類が傷つかずに遡上できるようなフラップをつけた構造に改装される。このステーションは1973年に建設され、一部の部品の不具合により基準以下の機能しか果たせていなかったため昨年から改修されている。このウナギに配慮した設計は2009年のEel Regulationsによるもので、魚類に配慮した設計のポンプとウナギ用の通り道の導入は同地域では初。今回の改装代40万£(約5200万円)は地方税と土地所有者から支払われる。
“£400k project will help to reduce flooding in South Holland” (Spalding
Today, UK)
http://www.spaldingtoday.co.uk/news/400k-project-will-help-to-reduce-flooding-in-south-holland-1-7580371

★オーストラリアでウナギ釣り大会開催
オートラリア東海岸のMid North Coastで、10/3〜6までウナギ釣り大会(THE
BELLINGEN Eel Fishing Championships)が行われる。その日の最大のもの、またはもっとも生きの良いウナギを釣った釣り人に対して賞が贈られる。16歳未満の部でも最大のウナギを釣った釣り人に賞が贈られることになっている。これまでの最大の記録は2009年の11.65kg。このイベントは今年で30年目を迎える。
“Prizes up for grabs in Mid North Coast eel fishing comp” (Guaridian
News, AU)
http://www.nambuccaguardian.com.au/story/4178129/prize-for-the-biggest-eel/?src=rss

「日刊 世界のウナギニュース」は 平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。

環境省がニホンウナギの生息環境保全の考え方の検討を開始 (日刊 世界のウナギニュース2016年9月16日) 

★2016年9月16日(金)、環境省によりニホンウナギの生息環境の保全に関する考え方をまとめるための検討会が発足し、第1回検討会が開催されました。検討会では、2014年、2015年に行われた調査結果の結果として、堰などの河川横断構造物による遡上の阻害を解消すること、瀬淵構造など多様な水深、浮き石や河岸の植生などの隠れ場所を回復することが重要であることが明らかにされてきたことが報告された。
“ニホンウナギ保護 河川などの環境改善の検討会発足” (NHK、日本)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160916/k10010689461000.html
“環境省、ウナギの生息地守る専門家会合、指針策定、環境アセスに活用” (産経
ニュース、日本)
http://www.sankei.com/politics/news/160916/plt1609160034-n1.html
“ニホンウナギ保全で検討会=生息環境整備を後押し-環境省” (時事ドットコム、日本)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016091600804&g=eco

「日刊 世界のウナギニュース」は 平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。

日系企業、フィリピンでニホンウナギ販路拡大を狙う(日刊 世界のウナギニュース2016年9月15日)

★日系企業、フィリピンでニホンウナギ販路拡大を狙う
フィリピンのミンダナオ島中部コタバト市には低湿地が散在し、Rio Grande de Mindanao川、Tamontaka川、上流のLiguasanデルタ地帯(22万ha)とつながっている。この場所で日系企業が地元の有望なパートナーと契約し、ウナギの販路拡大を狙っている。14日には社員らが副市長と会談し、養鰻場建設の見込みについて議論した。地元業者は、市ビジネス環境が外国企業に適していると見られたとし歓迎している。同市の市長と副市長は外国企業の誘致を盛んに行っており、戦略地域ではショッピングモールなどが急成長し利益を上げている。
“Japanese group eyes Unagi eel propagation in Cotabato City” (NDBCNEWS, PH)
http://www.ndbcnews.com.ph/news/japanese-group-eyes-unagi-eel-propagation-in-cotabato-city

★愛知県で保育園児ら放流
愛知県豊橋市の保育園児ら120人がウナギの成魚を放流した。
“養殖発祥の地・豊橋で保育園児がウナギ放流(愛知県)” (日テレNEWS24、日本)
http://www.news24.jp/nnn/news86231549.html

「日刊 世界のウナギニュース」は 平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。

EC、欧州刑事警察機構など ヨーロッパウナギのアジア向け違法取引を懸念(日刊 世界のウナギニュース2016年9月14日)

★EC、欧州刑事警察機構など ヨーロッパウナギのアジア向け違法取引を懸念ベルギーのブリュッセルで8日、「野生生物の不正取引に対するEUアクションプランの伝達と実行に関するワークショップ」(Workshop on Delivering and Enforcing the EU Action Plan against Wildlife Trafficking、山岡訳)が開かれた。欧州委員会、トラフィック、欧州刑事警察機構など7組織が発表を行い、うち3つがヨーロッパからアジアへのヨーロッパウナギの違法取引に関するものだった。これは、ヨーロッパウナギの違法取引対策の優先順位をつける、EUアクションプランに反映される。
“ILLEGAL TRADE IN EUROPEAN EELS HIGHLIGHTED BY THE EUROPEAN COMMISSION” (SEG, UK)
http://www.sustainableeelgroup.org/2016/09/09/illegal-trade-in-european-eels-highlighted-by-the-european-commission/

★SEG、活動目標発表
Sustainable Eel Group (SEG)は13日、活動目標とステップ(Theory of Change)を発表した。活動目標は、「健全な天然のウナギ個体群」、つまり、ウナギが、水圏生態系における役割を果たし、地域社会や経済、伝統にとって利益となる持続可能な利用のレベルにまで、本来の成育域に分布している状態にある事を掲げた。また、目標達成のためには、(SEGが)全ての利益を公平で効率的なプロセスにつなげ、EU諸国やそれ以外の国とでウナギの保全と管理ができるようになり、さらにそれを促進させるようなリーダーシップ連盟となる事だとしている。
“SEG DEFINING THE INTENDED CHANGE (THEORY OF CHANGE MODEL)” (SEG, UK)
http://www.sustainableeelgroup.org/2016/09/13/seg-defining-the-intended-change-theory-of-change-model/

 

★EMPの効果、見えるのはまだ先 デンマークの研究者
「(ヨーロッパウナギは)2013,2014年にはわずかに加入量の増加が見られたが、2015年には再び減少に転じた。増加傾向にあると言うには5-6年以上は必要だ。」こう話すのはデンマーク技術大学のKim Aarestrup研究員だ。デンマークでは2009年のEMP開始以来放流が行われており、その手法も現在では当初より系統立てられている。ただ、ウナギの減少には成育環境の減少や寄生虫など様々な要因があるとされ、さらに各要因がウナギに及ぼす影響の程度もまだ明らかになっていない。同研究員は、EMPの効果は、ウナギが性成熟するまでにかかる年月(5~25年)を考慮すると今判断するには早いと見ている。また、条件が多いがおそらく80-100年後にはかなり回復するだろうと話した。
*記事の下の図は今年放流された場所と数(計150万匹)。場所は大まか。緑は川、黄色は湖、赤は海や沿岸を指す。
“Ålen er alligevel ikke ål-right” (Århus Striftstidende, DK)
http://stiften.dk/regionen/aalen-er-alligevel-ikke-aal-right

★フランスでウナギなど大量死
フランス南東部Capestangの池や川でウナギを含む数千匹の魚が死んでいるのが漁業者により発見された。原因は今夏の干ばつや、5年に1度行われる植物の再成長を促進させるために行われる排水だと見られている。排水に関しては、漁業者が警鐘を鳴らしていたが、土地管理上の理由からやむなく行われた。
“Des milliers de poissons morts dans le canal et l’étang de Capestang” (franceinfo Languedoc-Roussillon, FR)
http://france3-regions.francetvinfo.fr/languedoc-roussillon/herault/des-milliers-de-poissons-morts-dans-le-canal-et-l-etang-de-capestang-1084857.html

「日刊 世界のウナギニュース」は 平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。

放流効果、さらなる調査を(日刊 世界のウナギニュース2016年9月13日)

★放流効果、さらなる調査を 今年のWKSTOCKEEL
今年の6/20-24に北アイルランドでICESのウナギの放流に関するワークショップ(WKSTOCKEEL)が開かれた。このワークショップでは、資源回復を目的とした放流の効果に関する最新の知識の集約と、放流を行う上で最も信頼のおけるアドバイスをするのに必要な知識のギャップを埋めるための調査を提案する場として定期的に開かれている。今年はEU6か国から19人の専門家が参加した。今回のワークショップでは、昨年までに示された懸念点が不明確なままである事や放流を評価するために必要な知識が不十分である事が示された。
“‘MORE RESEARCH NEEDED’ – REPORT OF THE WORKSHOP ON EEL STOCKING (WKSTOCKEEL) (SEG, UK)
http://www.sustainableeelgroup.org/2016/09/12/more-research-needed-report-of-the-workshop-on-eel-stocking-wkstockeel/

★ニュージーランド南島 ウナギ漁獲割当量 大幅減
ニュージーランドの第一次産業省は13日までに、ウナギ(南島北部の)、パウア貝、タイなど25種の水産物の漁獲量を年900万ドル減らすと発表した。漁獲量は2年ごとに更新され、ウナギはlongfinが5.1tから1t、shortfinが20tから1tに減らされる。
“Marlborough set to lose $9m annually from 50 per cent catch reduction”
(stuff, NZ)
http://www.stuff.co.nz/business/farming/84108121/marlborough-set-to-lose-9m-annually-from-50-per-cent-catch-reduction

★国内に7万9千匹のウナギ放流 フィンランド
フィンランドに10日までに、放流用のウナギの稚魚(1匹体長10cm、約1g)7万9千匹が輸送された。今年のウナギはイギリス南西部のSevern川から採捕され、スウェーデンで検疫を受けたもので、今後国内全土に放流される。ウナギは近年、フィンランドでも個体群の減少により加入が減少しており、河川のダムや堰により湖へ遡上できなくなっている。
“Suomen vesiin 79 000 ankeriaan poikasta” (Keskisuomalainen、FI)
http://www.ksml.fi/teemat/era-ja-luonto/Suomen-vesiin-79-000-ankeriaan-poikasta/833407

★埼玉県でウナギなど500匹 大量死
埼玉県戸田市の笹目川で11日、ウナギやコイなど500匹の魚類が死んでいるのが
見つかった。
現在、さいたま県土整備事務所などが調査を進めている。
”魚が大量死、コイやウナギなど…戸田の笹目川「よほど有害なものか」” (埼玉
新聞、日本)
http://www.saitama-np.co.jp/news/2016/09/13/04.html

★全日本持続的養鰻機構、資源管理の努力 業界にアピール
全日本持続的養鰻機構は12日、鹿児島県霧島市で会合を開き、中国、台湾、韓国の養鰻団体と協力して資源管理を行い、ニホンウナギがワシントン条約の対象種にならないよう努めると話した。このニュースは韓国語でも報道されている。
“ウナギ乱獲防止へ 資源管理徹底確認 日中韓と台湾の団体” (毎日新聞、日本)
http://mainichi.jp/articles/20160913/ddp/008/020/029000c
韓国語のニュース:”日中韓臺 국제기구, 일본뱀장어 “지속 가능한 자원관리”
적극 추진” (共同通信、日本)
http://www.47news.jp/korean/economy/2016/09/145619.html

★2mの大型ウナギ発見 イギリス
イギリスの中部バーミンガムで、推定20歳の体長2mほどのウナギが水路清掃中に発見された。発見後は付近の水路に放された。ウナギはバミューダ半島から泳ぎ着いたとされている。
“Rare eel strays thousands of miles from its home in Bermuda and arrives
in a canal in BIRMINGHAM” (Mirror, UK)
http://www.mirror.co.uk/news/weird-news/rare-eel-strays-thousands-miles-8780337

「日刊 世界のウナギニュース」は 平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。

香港の野生生物取引 関係当局が初議論(日刊 世界のウナギニュース2016年8月26日)

★香港の野生生物取引 関係当局が初議論
香港の漁農自然護理署(漁護署)、環境局、香港警方及香港海關の代表らが25日、初めて会合を開き、ゾウ、サイ、ヨーロッパウナギ等特に注意すべき種について議論した。漁護署は香港海關、警察と共に、絶滅危惧種保護連絡グループ(Endangered Species Protection Liaison Group/保護瀕危物種聯絡小組、山岡訳)の一員として絶滅危惧種の違法取引を取り締まっており、今後もグループではCITES記載種や自国の野生生物の保全義務を継続すると話した。また、密漁(猟)、密輸や違法取引などに対し、他国や国際的な機関と協力体制をとるという。
“Inter-departmental Task Force on Wildlife Crime holds first meeting (with photo)” (香港政府、香港)
http://www.info.gov.hk/gia/general/201608/25/P2016082400515.htm?fontSize=1
絶滅危惧種保護連絡グループの情報元:
https://www.afcd.gov.hk/english/publications/publications_press/pr358.html

 

★スウェーデンでウナギ稚魚7万5千匹放流
スウェーデン南東部Östergötland地方のStångån川でウナギの稚魚7万5千匹が放流された。元はイギリス南西部のSevern川で採捕され、その後、スウェーデン南部のHelsingborgで検疫を受けた後、Östergötlandの6か所に分けられたもの。スウェーデンでは昨夏、33万匹の稚魚がGöta川など4か所の河川から北海へ移送する試みもなされた。技術局(Tekniska Verken、山岡訳)のIngvarsson氏は、毎年放流に70万SEK(約840万円)かけているので効果がでると良い、ウナギの生残率を上げるためにダムの下流側に放したいがダムや漁業者を優先した古い制度により阻害されているため今後漁業者や自治体、電力会社と協力していきたいと話した。
“75 000 ålyngel vid Johannelunds badplats” (Corren.se, SE)
http://www.corren.se/nyheter/linkoping/75-000-alyngel-vid-johannelunds-badplats-om4266015.aspx

★魚肉・魚油用漁業、60%以上が管理不適切
持続可能な漁業グループ(Sustainable Fisheries Partnership, SFP)は22日、魚肉や魚油に利用するための魚種を漁獲する漁業(reduction fisheries)のうち主な20漁業について、持続可能性に関する年次概況報告書を発表し、60%未満が適切な管理状態にない事が判明した。(ただしアジアについてはデータ不足のため含まれていない)SFPの戦略ディレクターLee-Harwood氏は、この状態は近年改善されないままで、地域によっては改善意欲が無いように思われる。少なくとも2つの漁業で改善傾向が見られ、2つがMSC基準を取得し、6つがMSCの全審査通過したのは良かったと話した。
“SFP publishes annual sustainability overview of reduction fisheries” (Sustainable Fisheries Partnership, US)
https://www.sustainablefish.org/news/articles/2016/08/22/sfp-publishes-annual-sustainability-overview-of-reduction-fisheries

「日刊 世界のウナギニュース」は 平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。

カナダで魚類700匹大量死 プリンスエドワード島(日刊 世界のウナギニュース2016年8月25日)

★カナダで魚類700匹大量死 プリンスエドワード島
カナダのプリンスエドワード島西部のLittle Miminegash川で22日朝、大量の魚類の死体が発見された。原因は現在調査中。23、24日に死体の収集が行われた結果、マス624匹、トゲウオ90匹、エールワイフ3匹、ウナギ1匹計700匹以上が見つかったが全体の10%にも満たないと考えられている。発見者のMurphy氏によると、現場付近では過去9年間にわたり、川の環境改善のためにビーバーのダムやシルトの除去や植林などが行われており、マスの個体数が増えてきていたという。だが調査を行っている公共安全省、司法省の当局からは川の復元には最低3年かかると言われたと話している。同地域は別の場所でも今夏、魚の死亡が報告されている。
“Officials investigating fish kill in Roseville, P.E.I.” (The Guardian, CA)
http://www.theguardian.pe.ca/News/Local/2016-08-22/article-4621586/Officials-investigating-fish-kill-in-Roseville,-P.E.I./1
“Dead fish found in Roseville, P.E.I., watershed” (CBC News, CA)
http://www.cbc.ca/news/canada/prince-edward-island/pei-dead-fish-roseville-1.3731137
“Roseville fish kill cleanup slowed by rotting fish, murky water” (CBC News, CA)
http://www.cbc.ca/news/canada/prince-edward-island/roseville-fish-kill-cleanup-continues-1.3733798

★福井県で魚供養 ウナギなど放流
福井県敦賀市で24日、敦賀魚商協同組合や漁業関係者ら40人が魚供養が行った。毎年お盆の時期に行われ、今年で76回目。参加者は漁獲された魚に感謝し豊漁を願うとともに組合の物故者にも手を合わせた。最後にはウナギやイシダイなどの放流も行われた。
“海の恵みに感謝 敦賀で「魚供養」、40人参列 福井” (産経ニュース、日本)
http://www.sankei.com/region/news/160825/rgn1608250049-n1.html

「日刊 世界のウナギニュース」は 平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。

ニホンウナギのこれから 専門家と市民共に考える第一歩(日刊 世界のウナギニュース2016年8月24日)

★ニホンウナギのこれから 専門家と市民共に考える第一歩
ニホンウナギの絶滅リスクを専門家が評価し、市民と共に結果を共有・議論する「うなぎ未来会議〜ニホンウナギの絶滅リスク評価〜」が10月28~30日、中央大学後楽園キャンパス(東京都)で開かれる。公募により市民グループを7人ほど集め、専門家によるウナギの漁獲量、生息環境などについての公開討論を聞きウナギの持続可能な利用について考えてもらう。最終日には専門家と市民グループ、来場者全体でウナギとの共存について議論する。座長の中央大学の海部准教授は、ウナギを持続的に利用するための社会的な課題を市民との情報共有により明らかにしたいとしている。市民グループへの参加は9/11まで受け付けている。
“うなぎ未来会議:「ニホンウナギとの共存」 専門家の議論、市民に公開” (毎日新聞、日本)
http://mainichi.jp/articles/20160824/ddm/013/040/072000c

「日刊 世界のウナギニュース」は 平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。