投稿者「海部 健三」のアーカイブ

リソースとエフォート:ウナギ漁業管理をめぐる行政と研究者の「論争」から考えたこと

2016年11月8日付けの水産系業界紙みなと新聞に「ウナギ闇取引是正で論争」と題した記事が掲載され、水産庁の「闇取引があっても、現行の池入れ数量制限で管理可能」とする見解と、専門家の「ウナギの獲れた場所や量が分からなくなり、資源の分析や管理に支障となる」との見解が対立していると報じられています。ウナギ減少の問題を解決しようとしたとき、重要なプレイヤーとなる行政と専門家の間に無用な(または過剰な)対立があるとすれば大きな問題です。この「論争」については、なあなあにことを納めるという意味ではなく、早急に適切な対応をする必要があるでしょう。そこで今回の「対立」について、行政と専門家の間にはどの程度の意見の対立があり、その対立の背景にはどのような原因があり、どのように解決すべきなのか、考えてみました。

水産庁と専門家の「対立」
ことの発端を探るとながく時代をさかのぼることになりますが、直近の「論争」の発端として考えられるのは、10月12日に開催された自民党水産部会における水産庁担当者の発言です。10月17日付けのみなと新聞によれば、シラスウナギの国内漁獲のうち、半分以上が適切に報告されていない(密漁や密売が横行している)現状について、議員や関係者から質問や意見が述べられたのに対し、水産庁担当者は「闇流通はシラス高騰につながるものの、資源管理とは別問題。闇流通のシラスも、最終的には養殖池に入る」と発言した、とされています。
これに対し、10月29・30日に開催された「うなぎ未来会議2016」の専門家によるニホンウナギの絶滅リスク評価会議の中で、この発言を前提に、シラスウナギの密漁や密売がうなぎ資源管理に与える悪影響について議論がなされました。「うなぎ未来会議2016」で専門家より提示された意見は(1)密漁・密売によって漁獲量や漁獲努力量が不明確になり、資源量解析の妨げとなる、(2)違法行為が取り締まれない状況では、適切な漁業管理は望めない、(3)違法行為が野放しの状態では、(業界も含め)ウナギに対する社会的な支援を失う、の3点でした。私自身は、この三つの意見すべてに賛成します。つまり、水産庁とは「対立」する見解です。

どこまで「対立」しているのか
実際に水産庁担当課の方々の意見を聞いてみると、「密漁・密売など、適切に報告されていない漁獲が半分程度を締めている現状を、このままで良いとは思っていない」ということです。つまり、水産庁にも違法なシラスウナギの漁獲や売買を根絶する(少なくとも減少させる)意思は明確に存在します。また、シラスウナギの密漁や密売がウナギの資源管理に悪影響を与える、ということも認識されているようですので、水産庁と専門家の間には、実際には、根本的な意見の隔たりがあるわけではないように見えます。多分に私見が入りますが、この意見の「対立」は、現行制度の是正に比較的積極的な専門家と、比較的消極的な行政(水産庁)の温度差のずれが表面化したものではないでしょうか。そうだとすれば、その温度差はなぜ生じるのか、考えてみました。

「対立」の背景にあるもの
なぜ専門家と行政に温度差が生じるのか。その理由は、それぞれの仕事の進め方の違いにあるのではないかと考えています。専門家、特に大学教員はリソース(資源)が準備されてから、初めてエフォート(努力量)を割きます。ここでいうリソースとは、予算、人員、組織、規則、協力者など、仕事を進めるために必要なあらゆる資源を想定しています。
専門家の例として大学教員を想定すると、大学教員はリソースがなければエフォートを割きません。大学教員はある程度自律的に研究テーマを設定できるため、新しい研究テーマの着想を得たら、助成金を得るなどリソースの準備をしてから、実際の研究に取りかかります。そして、予算が得られない研究テーマについては、研究を行わないのです(予算がない研究テーマであっても、無理して多少進めることはあります)。その一方で、行政の場合は新しい行政ニーズに対応する必要が生じたとしても、これまで行ってきた仕事を捨てるわけにはいかないでしょう。予算や人材といったリソースが限定されている中でも、新しいエフォートを受け入れざるを得ない場合があるのではないでしょうか。
このような専門家と行政の立場の違いを考えてみると、新しい仕事を始めることに対する姿勢、または言明は、自ずと異なってくるはずです。大学教員などの専門家は新たな問題に積極的に関わるべきであると叫び、しかしリソースが得られなければ何もしないという判断が可能です。専門家社会では、「予算が得られなかった」は研究を行わない理由として十分に通用します(なお、私は、このことをおかしいとは思っていません)。これに対して、行政はやると言ったらやらざるを得ませんので、リソースを含む現在の状況をみながら、慎重にならざるを得ません。極端な場合、解決可能な状況になるまで「この問題に取組む」と宣言することはないかも知れません。そのような場合、専門家と行政が最終的には同じ方向を向いているとしても、それぞれの立場の相違により、発言の中身は大きく異なっているように見えるでしょう。

政治が果たす役割、市民が果たす役割
このような状況では、ウナギに関する諸問題を解決することは難しいでしょう。行政がウナギの問題に正面から取組むためには、予算や人員といったリソースの提供が欠かせません。リソースを提供できるのは、政治の力です。つまり、ウナギ問題の解決には政治の力が欠かせないのです。提供すべきリソースとしては、予算や人員だけでなく、立法や組織づくりといったシステム面も含まれます。このところ話題になっているシラスウナギの密漁・密売について考えると、例えば県をまたぐ取引の規制緩和など、水産行政によって改善が可能な部分も存在しますが、単純な所得隠しとしての過小報告や、反射界組織の資金源としての密漁の規制など、水産庁を筆頭とする水産行政が単独で対処することは不可能な問題が多く含まれます。このため省庁間の協力体制、国家行政と地方行政の協力体制を構築することも、政治の力に期待される部分です。同じことは、ウナギの成育場環境の回復についても言えます。河川や沿岸域の管理や環境保全、水産、農業に関わるあらゆる行政単位が協力して初めて、成育場の環境回復は前進するでしょう。
ウナギ減少の問題を解決しようとする中で、政治が果たすべき役割はある程度明確になってきました。それでは、市民が果たす役割はどのようなものでしょうか。市民には、ウナギ減少の問題の優先順位を上げることができます。政治の重要な役割のひとつは、限られたリソースの配分です。ウナギの問題、シラスウナギの密漁や密売の問題も、それが重要な政治課題であると認識されない限り、政治は動かないでしょう。「将来もウナギを食べたい」「密漁や密売されたウナギは食べたくない」「自分の属する社会が持続的であって欲しい」という望みが多くの市民から発せられることで、ウナギの保全と持続的利用、ひいては資源の持続的利用や環境保全という問題の優先順位を、上げていくことができるのではないでしょうか。インターネットで調べてみる、お昼時の話題で話してみるだけでも、問題の解決に近づくような気がしています。市民がウナギの減少を重要な問題として捉えていないとすれば、問題は解決されず、さらに悪化を続けると思われます。まずは、現状を知ることが重要です。

2016年11月14日
中央大学 海部健三

★342年ぶりにダム解放 アメリカ(日刊 世界のウナギニュース2016年11月11日)

★342年ぶりにダム解放 アメリカ
米マサチューセッツ州東部のThird Herring川にあるTack Factoryダムが来月撤去される。工事は来年1月に完了予定。North & South川流域協議会(North & South Rivers Watershed Association, NSRWA、山岡訳)とマサチューセッツ湾沿岸プログラム(the Massachusetts Bays National Estuary Program、山岡訳)とで行われる。この事業によりこの地域の生息地の86%が来春までに移動可能になるとされている。この事業は2002年から始まり、42万$(約4450万円)が州や国からの助成金などから出資されている。撤去予定のダムは植民地時代の建設時は土製で、製材所や製粉所の動力源として、産業革命時に再建された後は工場の動力源として機能していた。NSRWAのWoods理事は、このダムは海洋から最も近いダムであるため大きく悪影響をもたらしており、ニシンやウナギなどが何百年も移動できていないと話す。同氏は、ニシンはこの地域の地名の由来ともなっている象徴的な種だが90%が減少しており数年前には絶滅危惧種として指定されかけた。撤去によりそのレベルにまで達さないようにできればと話した。同川には本ダムを含めて4基の歴史のあるダムが設置されている。上流側の1つは2014年にYMCAにより撤去されているが、協議会ではさらに上流側にあるHanover Mall(ショッピングモールのようです、山岡注)が所有するダムも撤去したい考え。Jacobs Pondダムは撤去されず魚道が設置される予定。同州では3000以上のダムがあるが、そのうち200基しか現代の使用目的と合致していない。
“Tack Factory Dam to be removed” (Wicked Local Hanover, US)
http://hanover.wickedlocal.com/news/20161110/tack-factory-dam-to-be-removed

★全蒲連、水研に590万円寄付
9日、全国鰻蒲焼商組合連合会の涌井理事長らが国内のおよを250業者から集められた「完全養殖推進支援金」590万円を水産研究・教育機構に寄付した。同機構の宮原理事長は寄付金額としてはこれほどの金額の寄付は過去に例がないと話した。
“「完全養殖1日も早く」、ウナギ屋が思い込め水研機構に寄付”(日刊水産経済新聞)
http://www.suikei.co.jp/%E3%80%8C%E5%AE%8C%E5%85%A8%E9%A4%8A%E6%AE%961%E6%97%A5%E3%82%82%E6%97%A9%E3%81%8F%E3%80%8D%E3%80%81%E3%82%A6%E3%83%8A%E3%82%AE%E5%B1%8B%E3%81%8C%E6%80%9D%E3%81%84%E8%BE%BC%E3%82%81%E6%B0%B4%E7%A0%94/

★第1回国際ウナギ科学シンポジウム開催 2017/6/13-17 イギリス(日刊 世界のウナギニュース2016年10月12日)

★第1回国際ウナギ科学シンポジウム開催 2017/6/13-17 イギリス
来年6/13~17にイギリスで、第1回国際ウナギ科学シンポジウムが開催される。主催はロンドン動物学会、漁業管理協会(Institute of Fisheries Management,山岡訳)、環境局。世界中の研究者や専門家らが最新のデータや生物学的知見、ウナギ属魚類の管理についての発表を行う場としている。登録は12/23まで受付中。
“13-17 June 2017: International Eel Science Symposium Science into Management” (SEG, UK)

Sample Page

★うなぎ解禁 Adour川、Gaves Réunis川、Pau川 フランス
フランスのHautes-Pyrénées県を流れるAdour川下流、Gaves Réunis川、Pau川で漁獲されたウナギ、ニゴイなどの販売や消費が解禁となった。対象とされていた魚種はこれまで、衛生基準を満たしていないとして販売や消費が規制されていた。
“Les anguilles de l’Adour et des Gaves peuvent être vendues et mangées” (Toulouse7.com, FR)

Les anguilles de l’Adour et des Gaves peuvent être vendues et mangées

「日刊 世界のウナギニュース」は 平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。

3日間で7人裁判 シラスウナギ違法取引 アメリカ(日刊 世界のウナギニュース2016年10月11日)

★3日間で7人裁判 シラスウナギ違法取引 アメリカ
4~6日までに米メイン州で7人がシラスウナギの密漁、密売買で有罪判決を受けていたことが判明した。7人合計で190万$超相当のシラスウナギが違法取引されていた。アメリカでは過剰な漁獲のため、養鰻はメイン、サウスカロライナ、フロリダ州の3州のみでしか許可されていない。メイン州、サウスカロライナ州はシラスウナギ漁を厳しく規制しており、漁業は免許制で全採捕量を州に報告しなければならない。一方フロリダ州はシラスウナギに関する規制はなく、採捕量の少なさが漁業を実質不可能にしている。7人とも違法行為であると知りながら取引を行い、さらに、密売と密輸の隠ぺいのため、メインまたはフロリダ州の養鰻許可を利用していた。今回の申し立ては、アメリカ魚類野生生物局が複数権限を持つ、アメリカウナギの違法取引調査”Operation Broken Grass”による。
“Seven Men Plead Guilty for Illegally Harvesting, Selling American Eels” (Kansas City InfoZine, US)
http://www.infozine.com/news/stories/op/storiesView/sid/65509/

★韓国でタラの完全養殖成功 世界初
韓国の国立水産科学院が11日、タラ(スケソウダラ?)の完全養殖に成功したと発表した。タラは日本が1世代目の人工種苗の生産技術に成功していたが、それ以降は進展がなかったという。
“タラの完全養殖 韓国が世界初の成功” (KBS World Radio, 韓国)
http://world.kbs.co.kr/japanese/news/news_Sc_detail.htm?No=61026&id=Sc

 

★危ない!高速道路にウナギ
7日までに、ニュージーランド北島のWaikato高速道路で、絶滅が危惧されているlong fin eelが見つかった。ウナギは幸い轢かれず救出された。ウナギが高速道路にいた理由は不明。
“Large eel slithers onto Waikato highway” (nzherald.co.na, NZ)
http://www.nzherald.co.nz/nz/news/article.cfm?c_id=1&objectid=11724804

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化学物質汚染されたウナギを食べたら・・ イギリス(日刊 世界のウナギニュース2016年10月4日)

★化学物質汚染されたウナギを食べたら・・
SEGが、このほど発表された、(過去に)高濃度汚染地域のウナギを消費する事でダイオキシンなどの有害物質が体内に蓄積する事を初めて、明らかにした論文を紹介している。研究では、低濃度汚染の地域または養鰻場と高濃度汚染された地域、それぞれの地域で習慣的にウナギを食べている40-70歳の男性80人の血清を調査した。その結果、高濃度汚染された地域のウナギを食べていた人からはそうでない地域の人よりも2.5~10倍のダイオキシンとPCBs、8倍のダイオキシン様物質(OH-PCBs:PCBs水酸化代謝物)が検出された。また、*PFASも明らかに高濃度だった。研究者らは事前のリスク評価と、汚染物質の予測が重要だとしている。

*PFASs・・ペルフルオロアルキル化合物。難分解性、生物蓄積性がある人工化学物質。物質によっては、子供や胎児の成長、学習、挙動に影響を及ぼす可能性がある。生殖機能低下、発がんリスクの増加等も招くとされている。
参照先:http://repo.lib.hosei.ac.jp/bitstream/10114/10710/1/13R2116.pdf
https://www.atsdr.cdc.gov/pfc/docs/pfas_fact_sheet.pdf

“ACCUMULATION OF PERSISTENT ORGANIC POLLUTANTS IN CONSUMERS OF EEL FROM POLLUTED RIVERS COMPARED TO MARKETABLE EEL” (SEG, UK)
http://www.sustainableeelgroup.org/2016/10/04/accumulation-of-persistent-organic-pollutants-in-consumers-of-eel-from-polluted-rivers-compared-to-marketable-eel/

★SEG、CoP17でのEU提案承認を歓迎
2日、ヨーロッパのウナギの専門家組織SEGがCoP17でのEU提案承認を歓迎すると表明した。この提案には種ベースでの国際的または地域的な協力を促進する事、実践的なワークショップに適宜参加し、確認されている主なトピックに関する知識を共有する事などが含まれている。また、中国は全体的に支持を表明したが他のウナギ属魚類は附属書に含まれるべきだとは考えていないという。提案は最終的に、事務局からのコメントの追加とアメリカからの訂正を経て承認された。
“SEG WELCOMES THAT EU DRAFT DECISIONS WERE ACCEPTED AT CITES COP 17!” (SEG, UK)
http://www.sustainableeelgroup.org/2016/10/02/seg-welcomes-that-eu-draft-decisions-were-accepted-at-cites-cop-17/

★自治体がウナギにやさしい水力発電用水車開発に投資
イギリス南西部サマセット州BathamptonのAvon川で、地域企業による水力発電用の水車の開発が行われている。この水車は1987年に設置されたが、ウナギなどの魚類が通り抜けられるような構造に生まれ変わり、20世帯分1年分の電力が生産される。今後は電力量を20MW(4500世帯分)まで増やす見通し。地域企業が開発する事で地元住民が投資し配当金が得られるというメリットがある。今回の事業にはCO2排出量削減や再生エネルギー開発を戦略としているBath & North East Somerset(自治体)が13万ポンド(約1,690万円)投資した。
“Council invests in new water wheel for community’s renewable energy scheme” (Bath Echo, UK)
http://www.bathecho.co.uk/news/community/council-invests-new-water-wheel-communitys-renewable-energy-scheme-68919/

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静岡県 次漁期からシラスウナギ流通規制強化へ(日刊 世界のウナギニュース2016年9月30日)

★静岡県 次漁期からシラスウナギ流通規制強化へ
静岡県海区漁業調整委員会で29日、シラスウナギの不正所持、移動の規制強化策が了承された。これにより今後採捕者に対し、漁の終了報告、一時保管場所等や運搬代理人について事前届出が義務付けられ、違反した場合は採捕権のはく奪等の罰則が科される。12月の次漁期から適用される見通し。一時保管場所についてはこれまで、採捕者が都合により指定集荷人に直接手渡せない場合、自宅などで一時保管または他者が運搬して良い事になっていたが、今回県が、流通の透明さを欠く原因になるとして指摘した。委員からは採捕者個人ではなく組合の連帯責任にする提案されるなど、厳しい姿勢が見られた。
“ウナギ稚魚、流通透明化へ規制強化 静岡海区漁業調整委” (静岡新聞@SBS、日本)
http://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/unagi/286876.html

★ニュージーランド南島 ウナギの魚種別規制へ
ニュージーランドの省のGuy第一次産業大臣がこのほど持続可能性に関する施策と管理について見直し、まず初めに10/1から南島でのウナギの漁獲可能量をlongfin eelとshortfin eelとで分けると発表した。南カンタベリーでは新しく、漁業目的のlongfin eelに対しては1tが割り当てられる。今回の決定は昨年に完了した南島の資源評価に基づいてなされたが、2018-19年に行われるさらなる評価で新しい漁獲可能量が政府目標を達成しているかを審査し、必要であれば再調整が行われる。これに対し南島のうなぎ業界の環境コンサルタントChisholm氏は、以前の漁獲可能量は両種合わせて35tだった、新しい量の1tは1000匹にしかならず事実上longfin eelの禁漁だ、今回の判断は柔軟性に欠け、緑の党への懐柔であり、科学的根拠についても考慮されていないと批判した。業界で反対運動をする事も考えたが、資金繰りはできなかったという。
“Revised quotas for eel catches in South Canterbury may put exporters out of business” (stuff, NZ)
http://www.stuff.co.nz/business/84733888/revised-quotas-for-eel-catches-in-south-canterbury-may-put-exporters-out-of-business

★バハマ、ハミルトン宣言署名
29日までにバハマのMitchell外務・移民大臣がハミルトン宣言(The Hamilton Declaration、山岡訳)に署名した。この宣言はバミューダ諸島政府とサルガッソ海委員会(The Sargasso Sea Commission、山岡訳)とで、アメリカウナギやヨーロッパウナギの産卵地などとして知られている同海域の保護を行うとするもの。拘束力はもたないが、バミューダ諸島政府は委員会に対し、継続的な評価の下、サルガッソ海の健全性、生産性、回復力を保持させなければならないとしている。委員会は研究者や公海の生態系の保全に関して国際的に評価されている者で構成され、他の署名国間での協議後にバミューダ諸島政府から指名される。この宣言は2014年3月にアゾレス諸島、バミューダ諸島、モナコ、イギリス、アメリカとで署名されたのが始まりで、今年1月には英領ヴァージン諸島が署名し、今回で7か国目となった。
“Sargasso: Bahamas Signs Hamilton Declaration” (Bernews, BM)
http://bernews.com/2016/09/trust-welcomes-boa-plans-for-olympic-wall/
宣言の詳細等はこちら:http://www.sargassoseacommission.org/about-the-commission/hamilton-declaration

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稚魚販売会社 1億6千万の所得隠し 日本(日刊 世界のウナギニュース2016年9月29日)

★稚魚販売会社 1億6千万の所得隠し 日本
静岡県湖西市の稚魚販売会社「シラス販売」が昨年までの6年間で1億6千万円の所得を隠していた事が、名古屋国税局により明らかになった。現在は納税済みだが、架空の仕入れ先からの経費を計上し仕入れ先への謝礼金や高級車代として使ったと見られている。ある元国税局職員は、ある程度の経営規模の業者の資金の動きがシラスウナギの価格高騰により大きくなっていると分析しており、国税が注視していると話した。
“湖西のウナギ稚魚販売会社が所得隠し” (中日新聞、日本)
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20160929/CK2016092902000103.html

★漁業者が風力タービン建設中止訴え スウェーデン
スウェーデン南部のスコーネ県とブレーキンゲ県との間にあるハーネ湾に建設予定ウィンドファーム83基に対し、うなぎ漁業者が建設中止を求めている。2011年の建設許可当時の高さは最高170mまでとされていたものが、最近になり220mになったためだ。これに対し漁業者らは、施行された場合、漁業に悪影響が出るとして土地環境裁判所(mark- och miljödomstolen、山岡訳)に訴える見込み。漁業者の代表のMalmer氏は、220mはスウェーデンで最も高い高層ビルTurning Torsoよりも高い、事態はこのまま見過ごされるべきでないと語った。
“Ålfiskare vill stoppa vindkraftverk” (svt, SE)
http://www.svt.se/nyheter/lokalt/blekinge/alarfiskare-vill-stoppa-vindkraftverk

ヨーロッパウナギは管理できていない 専門家が警告 スウェーデン(日刊 世界のウナギニュース2016年9月28日)

★ヨーロッパウナギは管理できていない 専門家が警告 スウェーデン
スウェーデン農業大学のDekker博士がヨーロッパウナギ管理について、EU各国で計画が立てられているがほとんどの国で実践されていない、保全策を進め行き詰まっている現状を打破する努力がなされるべきとICES Journal of Marine Scienceで述べている。同氏はまた、現在の保全策ではヨーロッパ全体をカバーできていないし、地中海やバルト海などの計画には穴がある事を指摘し、おそらく今後現状は改善しないだろう、自分たちの現状を明確にすべきと話した。
“Vi tappar greppet om ålförvaltningen, varnar forskare” (SLU, SE)
http://www.slu.se/ew-nyheter/2016/9/vi-tappar-greppet-om-alforvaltningen-varnar-forskare/

★自家発電フィッシュタグ開発 アメリカ
アメリカの太平洋北西国立研究所(Pacific Northwest National Laboratory)のZhiqun “Daniel” Deng研究員らのチームが魚の動きを動力源にしたフィッシュタグを開発した。フィッシュタグはこれまでバッテリーの電源がなくなるまでが使用期限となっていたが、今回の開発により、魚が泳ぎ続ける限りトラッキングができるようになるため、ウナギなど回遊魚の移動調査に利用できる可能性がある。チームではフィッシュタグの寿命を延ばす方法を10年以上研究しており、今回のタグには新しく圧電発電装置を採用。タグは来年、コロンビア州とワシントン州のSnake川でのチョウザメの研究に使用される予定だ。研究チームは、最適な設置場所やサイズなど今後も実験を行いたいとしている。
“Self-powered fish tag tracks fish for as long as they swim “ (treehunger, US)
http://www.treehugger.com/gadgets/self-powered-fish-tag-tracks-fish-long-they-swim.html

★アボリジニの岩絵 崩壊の危機 オーストラリア
オーストラリア北東部クイーンズランド州ヨーク岬半島にある、Quinkan の岩絵が崩壊の危機にさらされている。岩絵の一部には1万年ほど前に描かれたウナギ、カンガルー等が描かれており、世界で最も重要な岩絵の1つとして知られている。岩絵は砂岩の断崖に描かれており壊れやすい。しかし、州が、先住民による付近のLaura川での金の採掘を許可し、これに対し土地所有者や同川の地域住民らが反対の声を上げている。採掘には、天然資源鉱山局(Department of Natural Resources and Mines、山岡訳)の許可が必要だが、許可には土地所有者の同意を得た、先住民の土地に対する権利書が必要であるため、土地所有者側が今後、問題提起すると見られている。
“Cape York rare Indigenous ‘library of rock art’ under threat by gold mine, traditional owners say” (ABC News, AU)
http://www.abc.net.au/news/2016-09-28/rare-indigenous-library-of-rock-art-under-threat/7867386

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ウナギの成育地 NPOが保護事業 カナダ(日刊 世界のウナギニュース2016年9月27日)

★ウナギの成育地 NPOが保護事業 カナダ
カナダの自然保護団体、Conservation de la Nature Canada(NCC)が26日までに、25の保全事業を行うと発表した。このうち、2つの事業は、アトランティックサーモンやアメリカウナギなどが生育するMalbaie川があるケベック州ガスペ半島で行われる。NCCは1962年から活動しているNPOでこれまで1.1ha相当の土地の保護を行っており、今年は事業費として500万$が投資される。

“Deux nouveaux projets de conservation de la nature en Gaspésie” (Ici Radio-Canada, CA)
http://ici.radio-canada.ca/regions/est-quebec/2016/09/26/001-conservation-canada-quebec-gaspesie-nature.shtml
NCCのサイト:http://www.natureconservancy.ca/en/

★魚類大量死 レユニオン
マダガスカルの東に位置するレユニオン(フランスの県)北部のSaint-Denis川でウナギを含む魚類やエビ等が大量死しているのが発見された。雨量が例年よりも少なく水不足になった事が原因とされているが、住民は保全のために禁漁となっている魚類が大量死している事に対し怒っており、上流側の流れを変える工事により水位が30cm下がった事も原因だとしている。

“La rivière Saint-Denis à sec, une centaine de poissons morts” (LINFO.RE, RE)
http://www.linfo.re/la-reunion/societe/702827-saint-denis-la-riviere-seche-et-les-animaux-aquatiques-retrouves-morts

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ウナギ属魚類の取引等調査へ ワシントン条約会議でEU提案採択(2016年9月26日)

★ウナギ属魚類の取引等調査へ ワシントン条約会議でEU提案採択
現在南アフリカで開かれている第17回ワシントン条約締約国会議で25日、ウナギ属魚類の資源について議論が行われ、EUが提案した、漁獲量や国際取引などに関する調査が全会一致で採択された(承認は会期中)。中央大学の海部准教授は、日本がこれまで適切に資源管理をしてこなかった事に対する警告だとしており、養鰻業者の団体「全日本持続的養鰻機構」の村上会長は現状を危惧し、ニホンウナギが生息する東アジア各国の団体と協力していきたいと話した。会議に参加した水産庁の太田審議官は、今回の採択はウナギの生息国がデータ収集などの必要性を認識する機会であるとするも、現在規制されているヨーロッパウナギの資源回復については効果が見られていない可能性について指摘し、条約規制の有効性についての議論が必要であるとした。

“ワシントン条約会議 ウナギの国際取引 実態調査へ” (NHK NEWS WEB、日本)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160926/k10010706721000.html
“ウナギの取引調査へ ワシントン条約会議、保護策を検討” (東京新聞、日本)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201609/CK2016092602000250.html
“世界鰻魚捕撈將全面調查 對日警告掃到台灣” (HiNet新聞、台湾)
http://times.hinet.net/news/19323148
“鰻魚生存大作戰!歐盟提案調査保護” (新頭殻、台湾)
http://newtalk.tw/news/view/2016-09-25/77580
“《华盛顿公约》缔约国会议通过保护鳗鱼决议案 (中国新聞網、中国)
http://www.chinanews.com/gj/2016/09-26/8014751.shtml
“뱀장어 즐겨먹는 日어쩌나…국제사회 보호 수위↑” (아시아경제、韓国)
http://www.asiae.co.kr/news/view.htm?idxno=2016092615490061268

★親うなぎ規制 徳島でも
徳島県の徳島海区漁業調整委員会と内水面漁場管理委員会は23日、今年11/1~翌3/31は親うなぎの採捕を禁止する事を決めた。もし禁漁中に採捕を行った場合、1年以下の懲役か50万円以下の罰金が科せられる。来年度については今シーズンの状況によって決めるという。

“親ウナギ採捕に禁止期間 県、11月から来年3月” (徳島新聞、日本)
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2016/09/2016_14746934098237.html

★ヨーロッパ最後の天然大型河川 研究者200人らダム建設中止訴え
9/23までに、33か国200人の研究者らがアルバニア政府に対し、Vjosë川初のダム建設計画を中止するよう求めた。ウィーン大学のSchiemer教授によると建設による環境への悪影響の評価がなされていないという。同川は、ロシアを除くヨーロッパで最後の天然大型河川。ギリシャ付近に小さなダムが1基あるが、水文学者によると、そのダムの下流域のアルバニアの環境はほとんど変化しておらず、生態系についても分かっていない事が多い。アルバニア政府は前回の選挙で河川の保護を公約に掲げていたが、5月にトルコとダム建設を契約し、現在、Vjosë川だけで8基の水力発電所の建設を計画している。エネルギー省のGjiknuri 大臣は「発展途上国は博物館にはなれない。水力発電には欠点もあるが、発展には環境へのコストが伴うものだ」と(7月に)話した。建設は、隣国マケドニアの殆どの水系にも脅威となるおそれがある。

“Scientists demand halt to damming of Europe’s last wild river” (New Scientist, UK)
https://www.newscientist.com/article/2106908-scientists-demand-halt-to-damming-of-europes-last-wild-river/?utm_medium=Social&utm_campaign=Echobox&utm_source=Facebook&utm_term=Autofeed&cmpid=SOC%257CNSNS%257C2016-Echobox

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