ニホンウナギで初めて天然遡上個体の減少を特定した論文が公開されました

ニホンウナギで初めて天然遡上個体の減少を特定した論文が公開されました

内容:中央大学を含む研究グループは、以下の論文を発表しました。この論文では、岡山県におけるケーススタディとして、ニホンウナギの天然遡上個体の減少を世界で初めて特定しています。また、近年開発された、ウナギの天然遡上個体と放流個体を判別する手法を河川及び沿岸域で捕獲された個体に応用した、初の事例でもあります。

ニホンウナギは絶滅危惧種に指定されていますが、その資源動態を推測した論文はこれまで1報しか存在せず、その論文では1990年以降1歳以上のニホンウナギは増加していると結論づけています。しかし、当該論文は、古くからウナギの放流が行われてきた日本の河川や湖沼の漁獲データに基づいており、放流個体の影響が考えられます。

そこで本研究では、最近開発された耳石安定同位体比を利用した手法を用いて天然遡上個体と放流個体を判別し、天然遡上個体の優占する水域における資源量の動態を推測しました。天然/放流の判別の結果、放流が行われている淡水域で捕獲された161個体のうち、98.1%が放流個体と判別されました。一方、放流が行われていない沿岸域で捕獲された128個体のうち82.8%が天然遡上個体と判別されました。天然遡上個体が優占する沿岸域における2003年から2016年までのはえ縄及び定置網のCPUE(単位努力量あたりの漁獲量、個体数密度の指標)は有意に減少しており、この水域における天然遡上個体が現在、減少していることが示されました。

岡山県の淡水域に生息する天然のニホンウナギは極めて少なく、しかも、天然遡上個体が多く存在する沿岸域の個体数密度指数も減少しています。全体的にみると、岡山県に生息する天然遡上のニホンウナギは、著しく減少したと結論づけられます。ニホンウナギは単一の産卵集団により構成されているため、この地域の資源動態が、個体群全体の動態を反映している可能性、つまり、ニホンウナギ個体群全体が減少を続けている可能性も考えられます。

論文タイトル:Depletion of naturally recruited wild Japanese eels in Okayama, Japan, revealed by otolith stable isotope ratios and abundance indices(岡山県の天然個体の優占する水域におけるニホンウナギ資源の減少)

著者:海部健三(中央大学法学部)、横内一樹(水産研究・教育機構中央水産研究所)、樋口富彦(東京大学大気海洋研究所)、板倉光(メリーランド大学環境科学センター)、白井厚太郎(東京大学大気海洋研究所)

掲載誌:Fisheries Science

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プレスリリース:中央大学からのプレスリリースはこちらのリンクから。

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