投稿者「海部 健三」のアーカイブ

日刊 世界のウナギニュース(2016年3月8日)

★ニホンウナギの保護のための、日中韓台4か国での協議が滞っている。各国での利権争いが障害となり、日本対他3国でどちらがイニシアチブを取るかが決まっていない。中国と台湾は、自ら規制をかける事による国内への影響を懸念している。昨年9月に行われる予定だった会議もまだ開催目途が立っていない。
“East Asian deal on eel conservation remains elusive”(Nikkei Asian Review, 日本)

★シドニー北西のDevlins川で、ウナギなどの魚類がヘドロや油の中で死んでいるのが2/29に見つかり、環境保護局が原因調査を行っている。ある地元住民は、2013年8月から始まった、Epping〜Thornleigh間での鉄道敷設工事が原因ではないかと見ている。この工事は、シドニー〜ニューキャッスル間を結ぶMain North線改良を目的とした北西シドニー鉄道建設プログラムの中でも重要な区域であり、もうすぐ完成する。
 ニューサウスウェールズ州によると、工事に伴う排水に関しては、事業チームが毎日モニタリングを行っており、環境保護局が定期的に調査している。当局では、調査中に腐敗したウナギが見つかったものの、原因の可能性のある汚染源は見つからなかったとしている。
“Dead fish and eels at Devlins Creek prompt EPA investigation into pollution” (The Sydney Morning Herald, AU)

「日刊 世界のウナギニュース」 平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。

日刊 世界のウナギニュース(2016年3月7日)

★鹿児島県のシラスウナギ漁の不漁が続いている。昨年12/15〜行われているが、先月末時点で昨シーズンの45%に留まっている。
“シラスウナギ漁 県内不漁が続く(鹿児島県)” (日テレNEWS24、日本)

★香港税関で、男女二人組からウナギ91kg分押収。二人はアムステルダム、マドリードを経由してビゴ(スペイン)から入国。
(注:ヨーロッパウナギを香港経由で東アジアのいずれかの国に密輸しようとしていたと考えられる)
“Travelers held for carrying endangered eels in luggage” (The Standard, 香港)

★アメリカのコネチカット川流域協議会は、アメリカ合衆国魚類野生生物局と共同で、Coginchaug川、Higganum川、Moodus川等における回遊魚の個体数のデータを集めるため、「市民科学者(citizen scirntist)」の研修会を3/23に行う。市民科学者はボランティアで、4/1〜6/30まで指定河川で週3回15〜30分、川を歩いてモニタリングを行う。モニタリングの内容は、対象魚の有無の確認、存在を証明するものの収集(卵、鱗、死骸、捕食者の鳥類など)、地域住民からの聞き取り調査。
コネチカット州エネルギー・環境保護部内水面漁業課のGephard氏は、「情報が不足している、職員減少に伴いモニタリングプログラムの予算が削られている」と指摘する。同課では、3〜11月までの6か月間、アメリカウナギやタイセイヨウサケなどを対象とした、期間限定の「回遊魚プログラム」も実施する。活動内容は、魚道(ウナギ用も含め)のモニタリング、Herring、Shad、マスの維持、0歳のアメリカウナギの生物試料の収集と加工、電動魚類計数器のチェックとメンテナンス、魚道のデータ収集、河川での電気漁等。このプログラムは、生息域の状況把握のために毎春行われている。
“Middletown training session will teach ‘citizen scientists’ to track herring”(The Middletown Press, US)

★アメリカのBarnegat湾で、キスイガメやアメリカウナギ等海洋生物の死亡やボートの破損の原因となっている、投棄カニかご(crab pot)・漁具の対策として、2年間の官民共同リサイクルプロジェクト「Fisihing for Energy Project」が始まる。アメリカ海洋大気庁が補助金109,619$を出資、ニュージャージーの野生生物保護基金が主導で、大学やカニ業者なども参加する。加工はニュージャージーを拠点とするCovanta社。プロジェクトの目標は、「Brick郡区〜Stafford郡区間の漁具1000個分の除去」で、同様のプロジェクトが、Great湾、Mullica川で2年前にStockton大学により行われており、のちにChesapeake湾清掃活動のモデルとなった。
野生生物保護基金によると、ニュージャージーでは7-8月には385,000人の遊漁者が訪れるが、遺棄されたカゴの数は正確には把握されていない(地元漁業者によると年10%)。しかし、同州の海洋漁業局も本プロジェクトにより、投棄漁具の報告システムを考案することになった。また、予防策や遊漁者への教育も必要だと同局では話す。
Covanta社では金属破砕機や巨大磁石を用いる施設もあるが、漁具は網や金属などが混在しているため、分離は手作業で行われる。チェーンソー等が必要な時もあり労力を要するが、最終的には金属以外の物質は全て燃焼させ、金属だけが取り出される。同社では2008年からアメリカの西、東両方の港から投棄漁具を収集しており、その量は300万ポンド(約136万kg)、2200世帯が約1か月間分使用する電力量に相当するという。
“Trappings of Energy to Clear Barnegat Bay”(The Sandpaper.net, US)

「日刊 世界のウナギニュース」
平日の(およそ)毎日、研究室スタッフの山岡が世界のウナギニュースを厳選し、海外のものは抄訳をつけてお届けします。

日刊 世界のウナギニュース(2016年3月4日)

★2/29に日本でも報道された近大とマレーシアのサバ大学で共同の水産研究所を開設したニュースが、イギリスでも報道された。
近代ウナギへ布石、水産研が初の海外拠点 マレーシアに(朝日新聞)
“Malaysia, Japan Cooperate on Aquaculture Techniques”(The Fish Site, UK)

★スペイン南東部Murcia州のSegura川清掃プロジェクトが、Intenational River 
Foundationから2015年ヨーロッパ河川賞を受賞。Segura川は2000年代初頭にはヨーロッパでもっとも汚い川の一つとされていたが、Segura川水利連合(Confederación Hidrográfica del Segura)と自治体により10年以上浄化活動がなされていた。河川水は、浄化・再利用装置により、灌水に利用されるまでになり、ウナギやカワウソも戻って来るかも知れない、としている。
”River Segura clean^up project competes for European Prize”(Murcia 
Today,Spain)

★カナダ・アメリカの五大湖の一つ、Sperior湖で外来種であるヤツメウナギの数が増え続けており、対策が必要だと専門家がコメントしている。同湖ではヤツメウナギにより、マスや他の魚種が殺されており、五大湖漁業委員会は今夏にも、産卵河川にヤツメウナギ駆除剤3‐トリフルオロメチル‐4‐ニトロフェノール(TFM:3-trifluoromethyl-4-nitrophenol)を使い、現在4万〜6万匹いるとされる個体数を半減させる予定。近年、ヤツメウナギ対策はHuron湖とMichigan湖で重点的に行われ、成果がみられている。
(注:ヤツメウナギは、ウナギ属魚類とは全く別の生物グループに属します)
“Blood-sucking lamprey eel numbers increasing in Lake Superior” (CBC 
News Thunder Bay, Canada)

日刊 世界のウナギニュース(2016年3月3日)

★イギリスのJames池で、3月2日、漁師、行政職員、一般市民らがシャベルで堆積物を除去した。ヘリングやウナギのために、堆積物で狭まっていた水路を拡大する。申請していた掘削機の使用許可も下りたため、今後残りの場所で使われる。
“Many Hands (and Shovels) Make Wet Work at James Pond” (Vineyard Gazette,
UK)
https://vineyardgazette.com/news/2016/03/02/many-hands-and-shovels-make-wet-work-james-pond

日刊 世界のウナギニュース(2016年3月2日)

★Motcombe池の質改善
イギリスのEastbourne Bourough州にあるMotcombe池は、大量のシルトが堆積しており溶存酸素が少なかった。また水の流れが緩やかで藻類が増加していたため、州では生態学の専門家等と協働してシルトの除去作業を行った。作業の前に一旦、池内のすべての魚類を移した際、多くのウナギが発見された。除去作業は2/24で完了しており、3/11までには一般に再開放される。
“Motcombe Pond will be ‘oasis’ for wildlife”
http://www.eastbourneherald.co.uk/news/local/motcombe-pond-will-be-oasis-for-wildlife-1-7241277

日刊 世界のウナギニュース(2016年3月1日)

★近大ウナギへ布石、水産研が初の海外拠点 マレーシアに(朝日新聞)
近大が、マレーシアのサバ大学と養殖開発センターを29日に共同設立。稚魚の生産・外販などを担う「近畿大学水産養殖種苗センター東南アジア事業場」も現地に開設。東南アジアで高級魚として好まれているナポレオンフィッシュの養殖などを行う予定。将来的には東南アジア産ウナギの養殖をする計画も。
http://www.asahi.com/articles/ASJ2Y41RGJ2YUHBI00R.html
”UMS, Kinki University sign MoA on fish farming techniques”(Borneo Post・
マレーシア)
http://www.theborneopost.com/2016/03/01/ums-kinki-university-sign-moa-on-fish-farming-techniques/

★福島原発事故による水産物内放射線量が低下(Science News)
日本の調査チームは29日、科学アカデミー(Proceedings of the National Academy of Sciences)において、水産物のセシウム汚染は全体的には低いが、アメマスやニホンウナギなど上位捕食者は汚染レベルが最も高いままであると報告した。
”Low levels of radiation from Fukushima persist in seafood”
https://www.sciencenews.org/blog/science-ticker/low-levels-radiation-fukushima-persist-seafood

日刊 世界のウナギニュース(2016年2月29日)

★EU、EU Action Plan against Wildlife Trafficking(野生生物売買に対するEU行動計画)を採択

現在EUでは,野生生物の取引や持込などに対して厳しい規則(EU Wildlife Trade Regulations:山岡訳・EU野生生物取引規則)を設けている。しかし,国によって資金,自覚度,優先度が異なり実施レベルにもばらつきがあったため,より戦略的に,よりバランス良く行動するためのEU Action Plan against Wildlife Traffickingを2016/2/26に採択した。

本行動計画の3本柱

  1. 予防(EU内・国際的に違法な野生生物製品の需要と供給を減らすための措置を含む)
  2. 既にある方法のさらなる実行・施行と、犯罪集団組織対策の向上
  3. 野生生物売買に対抗する、供給者・消費者・輸送国の国際関係強

実行具合は5年ごとにモニタリングされる。

”EU Action Plan against Wildlife Trafficking”
http://europa.eu/rapid/press-release_MEMO-16-388_en.htm

日刊 世界のウナギニュース(2016年2月26日)

★地中海に生息するヨーロッパウナギは,そのまま地中海の外に出られずにとどまっているのかどうか,長年議論されていたが,ジブラルタル海峡を通って大西洋へ帰っている事が判明。イギリス,デンマーク,スウェーデンの研究チーム(資金源:フランスのエコロジー・持続可能な開発・エネルギー省)が南フランスで捕まえた8個体のウナギをトラッキング調査した。
“Surveillance scheme reveals travel arrangements of mysterious eels”
”New research dispels myth that European Eels are trapped in the 
Mediterranean” 続きを読む

水産認証制度に関するシンポジウムを行います

水産資源の持続的利用を目指した認証制度が,日本でも大きく取り上げられつつあります。例えば今年行われるリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックでは,国際的な認証を受けた水産物を利用するよう調達方針が定められています。米国のマクドナルドのフィレオフィッシュは,同じ認証を受けた魚を使用しています(日本は違います)。

現在のところ「国際的な認証制度」とは,実質的にはMSC(海洋管理協議会)とASC(水産養殖協議会)を指しています。これらの認証制度は,資源が持続的に利用されているのか,という問題以外にも,児童労働や不当労働等が行われていないか,当該漁業や養殖業が周囲の環境に影響を与えていないか等,認証にあたって多岐に渡る項目を審査します。

世界の水産物の1割以上がこれらの認証を受けているとも言われますが,2016年2月現在において,日本の漁業・養殖業でMSC認証を受けているのはわずかに京都府機船底曳網漁業連合会のアカガレイ漁と,北海道漁業協同組合連合会のホタテガイ漁のみであり,ASC認証を受けている養殖業は一つもありません。

どのようにしたら,日本は水産資源を持続的に利用していくことができるのでしょうか。先進国を中心に広まりを見せる水産物の認証制度について学ぶことを通じて,水産資源の未来について,ともに考えましょう。

主催:水産学若手の会・日本水産学会関東支部会・日本水産学会シンポジウム企画委員会
日時:2016年3月30日(水) 午後 1:00-5:00 (12:30開場)
場所:東京海洋大学品川キャンパス(品川駅港南口から徒歩10分)(まだ部屋が決まっていませんが,当日分かりやすいように掲示します)
参加資格:なし(水産学会員資格は必要ありません。一般の方の来場は大歓迎です)
参加費:無料(事前申し込み不要)
企画責任者:海部健三(中央大学)・小川健(専修大学)
問合せ先:中央大学法学部海部研究室(ブログの「問い合わせ」を利用して下さい)

講演 ー水産物認証制度とはー
認証制度が必要とする基礎的要件 −国際的に認知されるエコラベルの共通点− 大元鈴子(総合地球環境研究所)
2.海洋管理協議会(MSC)と日本の漁業 鈴木充(MSC日本事務局)
3.養殖管理協議会(ASC)と日本の養殖業 前川聡(WWFジャパン)
4.日本の水産業と認証制度の現状 勝川俊雄(東京海洋大学)

パネルディスカッション ー日本の認証制度の課題ー
秋山 貴彦(パルシステム生活協同組合連合会)
岩尾 敦志(京都府農林水産技術センター 海洋センター)
村上春二(Ocean Outcomes)
山本 泰幸(イオントップバリュ株式会社)
若松宏樹(中央水産研究所)

総合討論 ー水産資源の持続的利用と水産物認証制度ー

H28水産学会認証シンポチラシ確定版1

お詫び:2015年10月20日記事「密漁ウナギに出会う確率は50%?」に関して

過去の記事に対するお詫びと修正です。

2015年10月20日に書いた「密漁ウナギに出会う確率は50%?」の一部が,すでに他者により発表された内容であったことをお知らせし,お詫びします。

記事では各都道府県に報告されたシラスウナギの漁獲量と,実際に養殖に用いられたシラスウナギの量の差をもって,「密漁・密売されたシラスウナギの量」としていましたが,これはTRAFFICレポート「ウナギ市場の動態:東アジアにおける生産・取引・消費の分析」(白石・Crook 2015)で発表された内容と一致していました。以下,該当部分です。
「各都道府県から報告されたシラスウ ナギの漁獲量は、2012年から2013年の漁期が2t、2013年から2014年漁期が8tだったのに対し、水産庁 が公表したシラスウナギの漁獲量はそれぞれ5.2tと17.3tであった(Anon, 2014c; 水産庁, 2015b) 。」

当該レポートは記事の末尾に参考文献として記載してありますが,正確には「引用文献」として引用箇所を明記すべきでした。白石さんとVicki,申し訳ありません。今後,より正確な記載を心がけます。