グリンピースのアンケート調査
環境保護団体グリンピースが消費者1,086名に対してウナギに関するアンケート調査を行い、その結果を公表しました。
アンケートの結果の概要
アンケートの結果
アンケートの結果によると、41.7%がニホンウナギが絶滅危惧種に指定されていることを知らなかったと回答しており、73.9%が養殖に用いるシラスウナギの半数について、密漁や密売などの不法行為が関わっていることを知らなかったと回答しています。昨今、ニホンウナギ資源の減少やシラスウナギの密漁と違法取引に関する報道が増加していますが、まだまだ一般的な認知は進んでいないことが示されました。
その一方で、ニホンウナギの現状を知らなかった回答者の約半数が、今後消費量を控えたいと回答しています。さらに、これからもウナギを食べ続けるため、販売者(飲食店や小売スーパー)ができることについては、「不正な取引によるウナギを販売しないよう、仕入れの基準を厳しくする」が63.1%と最も多い回答でした。
情報共有の重要性
このアンケートの結果は、ウナギをめぐる問題について、社会的認知は十分ではないが、認知が進むことによって消費者の行動が変わる可能性を示しています。ウナギに関する問題の解決にあたって、社会における情報共有の重要性が示されたと言えるでしょう。
ウナギを含め、社会問題を解決するために情報共有が重要であることは当然ですが、問題は、どのような情報を、どのような対象と、どのような方法で共有するのか、にあります。「欠如モデル」と呼ばれるような、行政や専門家からの一方的な情報伝達ではなく、ステークホルダー全体で問題の本質を確認し、共有する姿勢が重要です。ウナギ問題に関するステークホルダーのうち、現在最も情報を得ることが困難なのは、一般消費者でしょう。グリンピースのアンケートは、見事にその問題点を浮き彫りにするとともに、情報共有の促進によって問題が解決へ向かう可能性を示しました。
アンケート調査の今後の課題
アンケートの内容には少し気になった部分もありました。「ウナギの旬」について、[Q4]は以下のような設問になっています。
「土用の丑の日の由来 1つとして、「丑の日にちなんで、“う”から始まる食べ物を食べると夏 負けしない」という風習があり、江戸時代にウナギ屋が夏にうなぎが売れないで困っていて、「“本日丑の日”という張り紙を店に貼る」という平賀源内の発案が功を奏し、ウナギ屋が大繁盛したといわれています。ですが、実際には「土用の丑の日」は春夏秋冬と4季にわたってあり、本来のウナギ 旬は秋〜冬です。このことを知っていましたか?」
この質問にある「本来のウナギの旬」とは一体どのように定義されたものでしょうか。秋から冬のウナギを美味しいとする意見があることは承知していますが、一般的に共有されている認識とは言い難いのではないでしょうか。また、もしウナギの旬が秋から冬であることが一般的であったとしても、それは天然ウナギの場合であり、現在一般的に出回っている養殖ウナギには当てはまりません。この問いの意図は、土用の丑の日におけるウナギの大量消費を削減することにあると想像されますが、もしそうだとすればアンケートの形を模した恣意的な世論の誘導であり、批判されるべきでしょう。グリーンピースのアンケート調査そのものは大きな意義があるだけに、今後より公正な設問の設定が期待されます。
中央大学 海部健三