放流ウナギと天然遡上ウナギを判別する技術が開発されました

中央大学、東京大学、水産研究・教育機構などからなる研究チームにより、放流ウナギと天然遡上ウナギを判別する技術が開発され、論文が2017年9月15日、海洋科学に関する国際専門誌 ICES Jounal of Marine Scienceにて発表されました。今後放流の効果検証、正確なウナギの資源解析、自然分布の把握など、様々な研究への応用を通じて、ウナギの保全と持続的利用に貢献することが期待されます。
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タイトル:Discrimination of wild and cultured Japanese eels based on otolith stable isotope ratios.
著者:Kaifu K, Itakura H, Amano Y, Shirai K, Yokouchi K, Wakiya R, Murakami-Sugihara N, Washitani I, Yada T
掲載誌: ICES Jounal of Marine Science

要旨和訳
人為的標識を用いずにウナギの天然遡上個体と養殖個体を識別する手法を開発した。アメリカウナギ、ヨーロッパウナギ、ニホンウナギのシラスウナギおよび黄ウナギの漁獲量は1970年代以降減少し、近年は危機的な状況にある。資源の増殖を目指してEUおよび日本で放流が行われているが、放流の総合的な利益は未だ不明である。資源回復に対する放流の効果を検証するためには、放流個体の生残、成長、降河回遊および再生産を追跡する必要がある。養殖ウナギが放流される事例が多く見られるため、本研究では、耳石酸素・炭素安定同位体比を用いて天然遡上個体と養殖個体を識別する可能性を探った。95個体の天然遡上個体と314個体の養殖個体からなる、合計409個体の教師データから線形判別モデルを得た。クロスバリデーションの正答率は96.8%だった。このモデルを、再捕獲した20の放流個体に応用したところ、100.0%が養殖個体と判別された。このことは、これらの個体が成長期の初期を養殖場で過ごし、のちに放流されたことを示している。この手法を応用して河川や沿岸域、産卵場で捕獲された個体に占める放流個体の割合を明らかにすることにより、放流効果の検証につなげることができる。

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