ワシントン条約CoP17に対するEUの提案の内容

2016年4月27日に公開された、ワシントン条約第17回締約国会議に対する、ウナギ属魚類に関するEUの提案について、その内容の和訳です。背景については要点のみの抄訳、推薦事項(Recommendation)と添付書類(Annex1)「締約国会議に関する決定案」は全訳です。翻訳は研究室で行いましたが、誤訳に起因する損害等に対する責任は負えませんので、ご理解ください。

Seventeenth meeting of the Conference of the Parties Johannesburg (South Africa), 24 September -5 October 2016
Species trade and conservation
CONSERVATION OF AND TRADE IN ANGUILLA SPP.

背景(抄訳)
漁獲、回遊の阻害、生息域の減少など、様々な危機に直面しているウナギ属魚類については、その生残率を越えて消費してはならない。しかしながら、ウナギ属魚類では、あるひとつの種において漁獲と流通が規制され、供給が減少すると、満たされなくなった需要は、異なる種に向かう。このためウナギ属魚類については、全種をグループとして管理するべきである。
ヨーロッパウナギはワシントン条約(以下CITES)の附属書IIに掲載され、2009年より国際取引が規制されている。CITESによってヨーロッパウナギの国際取引が規制された後、ヨーロッパウナギ以外のウナギ属魚類、特にアメリカウナギとビカーラ種に対する需要が急激に高まった。これらの需要は、かつて大量のヨーロッパウナギを養殖のために購入していたアジアの国々によるものである。東アジアのウナギの輸入は、2010年までは90%がアジア内(60%)またはヨーロッパから(30%)であったが、2011年以降その割合は大きく変化し、近年は30%がアメリカから、35%が東南アジアからの輸入となっている。
ウナギ属魚類については、非持続的な漁獲だけでなく、違法取引も大きな問題である。CITESによる解析、東アジアのウナギ養殖データ、流通業者の情報は、現在もヨーロッパウナギの違法取引が継続していることを示している。
IUCNのレッドリストでは、評価が終了した13種のウナギ属魚類のうち、ヨーロッパウナギ、ニホンウナギ、アメリカウナギ、Anguilla borneensisの4種が絶滅危惧(Threatened)、Anguilla bengalensisAnguilla bicolor(ビカーラ種)、Anguilla celebesensisAnguilla luzonensisの4種が準絶滅危惧にランクされている。
ウナギ属魚類の保全と管理に関する最大の問題のひとつは、情報不足にある。ヨーロッパウナギについても、現在は輸出許可を発行するに足りるデータは存在しない。ウナギ属魚類の全ての種について、生物学的側面、個体群動態、利用と流通について、入手可能な情報の収集と、新たなデータの取得が必要である。

推薦事項(全訳)
個体数と利用(exploitation)に関する情報とデータをさらに入手し、Anguilla種の持続可能な取引の勧告をすすめていくために、締約国会議では本文書に掲載されている情報を考慮に入れ、Annex1に付記された決定案の承認を推薦する。

Annex1 締約国会議に関する決定案(全訳)

事務局に対して
17 x1
事務局は、外部基金を条件として以下を行う:
a) 独立した組織と契約し、ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)の附属書IIへの記載とその有効性から学んだ事や問題点に関する情報を収集し、調査する。これは特に、無害証明書の発行、施行、問題点や違法取引の明確化を含む。調査は、特にICES/GFCM/IFAAC Working Group Eelによる見解やデータを考慮に入れて行うものとする。
b) 契約した独立組織が、CITESに記載されていないAnguilla種に関する調査を行う。
i) 2009年にヨーロッパウナギが附属書IIに記載された後の流通レベルと、流通パターンにおける変化についてまとめる。
ii) 各種の生態、個体群状態、利用と流通に関して入手できる情報を集め、最新のデータとIUCNウナギ専門家グループによるレッドリスト評価に基づいた情報やデータとの相違が無いかを確認する。
iii) i)~iii)により確認された相違や問題に基づいた実践的ワークショップでの主題を提示する。
c) 第29回動物委員会(AC29)で議論ができるように上記調査の報告書を作成する。
d) 関連する、国、貿易相手国、FAO、IUCNウナギ専門家グループ、ICES/GFCM/IFAAC Working Group Eel、事業者、その他必要に応じて締約国から指名された専門家が参加・協力する実践的なワークショップを適宜開催する。
上記のワークショップでは、決定案17 x1 a、bで記載されたテーマについて議論するものとし、可能であれば色々なウナギ属の種に特定の問題に焦点を当てる。例えば、
i. ヨーロッパウナギの場合、無害証明書発行の実現とガイダンスや、同定の問題を含めた附属書IIの掲載実行。
ii. 他種の場合、国際取引がウナギの様々な成長段階に及ぼす影響について認識を深める方法、その種の確実な持続可能な取引のための施策の考案。
e)第30回動物委員会(AC30)で話し合いができるようにワークショップの報告書を作成する。

Anguilla種の取引を行っている締約国に対して
17 .x2
Anguilla種の取引に関わっている締約国は、事務局とFAOと協力し、以下の行動を取るよう奨励する。
a) 決定案17 .x1、2完遂のために必要な特定の情報を事務局やその業務を請け負う独立組織に提供する。
b) 実践的ワークショップに適宜参加し、専門知識や主題に関する知識を共有する(例:決定案17 .x1 dで例示されたもの)

動物委員会に対して
17 .x3
動物委員会は以下の行動を取る。
a) 第29、30回会議で、決定案17 .x1によって作成された報告書、決定案17 .x2に準じるヨーロッパウナギの生息する国により提出された情報、その他Anguilla種の保護や流通に関する情報について考察する。
b) Anguilla種の持続可能な取引を確実なものにするために、CoP18の締約国に対して推奨事項を提案する。

常設委員会に対して
17 .x4
常設委員会は、第69、70回会議でヨーロッパウナギの違法取引に関する情報について検討し、適宜推薦事項を承認する。

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