日本のウナギ資源に関する調査研究の弱さ IUCNウナギ評価結果をまとめた論文から

2014年に発表されたIUCNによるウナギ属魚類13種の評価結果が学術論文としてまとめられ,2015年8月5日にGlobal Ecology & Conservation誌に発表されました。私もIUCNのウナギ専門家サブグループの一員として執筆に参加しています。
この論文には,ニホンウナギ資源に関する調査研究が,同じ温帯種であるヨーロッパウナギ,アメリカウナギと比較して,非常に遅れていることも示されています(以下,図2を参照)。

■内容概略
この論文では,IUCNレッドリスト評価では一種ごと独立に行われていた評価が,種間で比較されている。その結果として興味深いことのひとつは,分布域は異なっていてもウナギ属魚類がそれぞれ直面している危機の要因は類似しているということだろう。日本ではニホンウナギの減少ばかりが注目されているが,世界中に分布するウナギ属魚類19種亜種(うち13種の評価結果が2014年に発表され,今回の論文の対象となっている)はそれぞれ,ニホンウナギと同様に過剰な消費・開発の影響を受けている。

ウナギ属魚類の間で,現在入手可能なデータの質も比較されている。ヨーロッパウナギ,アメリカウナギ,ニホンウナギのデータの期間と質を比較した図2によると,同じ北半球の温帯域に分布し,近年急激な個体群の減少が報告されているヨーロッパウナギ,アメリカウナギと比較して,ニホンウナギの個体群動態に関するデータが非常に貧弱であることが分かる。
ただし,1から15までランクを付けたデータの「質」に関しては,銀ウナギ,黄ウナギ,シラスウナギの順に線的な質の上下関係を想定している。ウナギ個体群の動態を把握することを目的とした時,この並びが適切なのかどうか,議論もある。しかし,いくらか並び順を変更したとしても,ニホンウナギに関するデータが他の二種より質的に劣っていることには変わりない。
産卵生態の調査では世界をリードする日本ではあるが,資源の管理という視点では,欧米の足元にも及ばないのがその現状だ。

IUCNレッドリスト評価に用いられたニホンウナギ(△),アメリカウナギ(◯),ヨーロッパウナギ(×)のデータの期間と質。データが対象とした地理的範囲は考慮されていない。また、IUCNレッドリストにおける評価では三世代の時間(ニホンウナギの場合は30年間)を基準とするために用いられていないが,日本にはさらに長期間にわたるデータも存在する。

IUCNレッドリスト評価に用いられたニホンウナギ(△),アメリカウナギ(◯),ヨーロッパウナギ(×)のデータの期間と質。データが対象とした地理的範囲は考慮されていない。また、IUCNレッドリストにおける評価では三世代の時間(ニホンウナギの場合は30年間)を基準とするために用いられていないが,日本にはさらに長期間にわたるデータも存在する。

論文は以下のリンクより無料で入手可能です。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2351989415000827

コメントは停止中です。