米国メイン州を中心にアメリカウナギ(Anguilla rostrata)のシラスウナギの密漁・密売に対するおとり調査が進んでいる。「Operation Broken Glass」と呼ばれるこの調査は、2016年にも3日間で7名が裁判にかけられるなどの成果を挙げている(2016年10月11日の記事)。メイン州には、アメリカでほぼ唯一のアメリカウナギのシラスウナギを流通させるマーケットが存在する(他にはサウスカロライナにごく小さなマーケット)。今回は、最も歴史が古い、メイン州最大の業者が摘発された。
ヨーロッパでもシラスウナギの密輸を摘発する大規模調査「Operation Lake」が進められた(2017年3月10日の記事)。国内で養殖されているウナギの半分以上が密漁・密売(無報告漁獲)・密輸などの違法な行為を経ていると考えられる日本においても、米国やヨーロッパのような大規模調査が求められる。警視庁だけでなく、国税局による調査も期待される(2016年9月29日の記事)。
アメリカウナギに対する米国内の需要は低い。しかし、ヨーロッパウナギがワシントン条約によって国際商取引を制限され、EUが域外との取引を禁止した2010年以降、ヨーロッパウナギの入手が困難になったことにより、東アジアからの需要が高まり、アメリカウナギのシラスウナギの価格が高騰している(下図はMaine Department of Marine Resourcesより)。2004年から2010年までの米国とカナダからのウナギ輸出量は世界の総輸出量の6%に過ぎなかったが、2011年から2013年では35%を占めるまでに大きくなっている。
今回の違法行為の摘発は、ウナギ属魚類に対するグローバルな消費行動の一端を示している。ウナギはある特定の一種のみを保護の対象とすると、需要が他種へとシフトする。このためEUは、全ウナギ属魚類を包括して管理すべきであると主張している。第17回ワシントン条約締約国会議(2016年9月)におけるEUの提案は、ヨーロッパウナギ単一種の保護によって他種へ悪影響が生じることを危惧したものであり、米国における捜査は、その危惧が現実のものとなっていることを明らかにした。EUの主張に関する詳細は過去の記事「ワシントン条約CoP17に対するEUの提案をどう解釈するべきか」を参照のこと。