アメリカウナギ、カナダで絶滅危惧種指定か?

カナダのラジオ局ICI Radio-CANADAのニュースサイトが2016年1月5日、カナダ水産海洋省が、カナダにおいてアメリカウナギAnguilla rostrataを絶滅危惧種に指定するかどうか、審査を行っていることを報じました。3月18日までパブリックコメントを募集するそうですが、いつ結論が出るのかについては不明です。

カナダ水産海洋省パブリック・コメント募集ページ

アメリカウナギについては昨年10月、米国の漁業・野生生物局(FWS)が同種をESA(Endangered Species Act)の対象とはしないことが発表されていますが、カナダはどのような判断を下すのでしょうか。記事の中にもあるように、カナダの「絶滅のおそれのある野生生物に関する委員会(COSEPAC)」は2012年に、本種は絶滅が危惧される状態にあるとしており、今回、カナダの水産海洋省が2012年のCOSEPACの結論を踏襲するのか、それとも2015年の米国FWSの判断を指示するのか、注目されます。

今年の秋に開始されるCITES(通称ワシントン条約)の第17回締約国会議でアメリカウナギの記載が提案されることになれば、おそらくニホンウナギも類似種として同時に提案され、議論の対象となるでしょう。カナダがアメリカウナギの現状を非常に厳しいものと捉えているのであれば、アメリカウナギを提案する可能性もあるのかも知れません。

以下は、ICI Radio-CANADAニュースサイトの訳です。今年から海部研究室にスタッフに加わってくれた山岡さんが、このフランス語のサイトを見つけ、和訳してくれました。
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ICI Radio-CANADA
「アメリカウナギ、絶滅危惧種になるか?
 —カナダの水産海洋省、絶滅危惧種への記載を3/18までに議論」
(訳:中央大学海部研究室 山岡未季)

絶滅のおそれのある野生生物に関する委員会(COSEPAC :Comité sur la situation des espèces en péril du Canada)は2012年に、セントローレンス川水系の人々に親しまれてきたこの魚を絶滅危惧の状態にあると認めた。COSEPACによると、本種は、特に汚染物質、水力発電用タービン、気候変動により絶滅の危機に瀕している。そのため、水産海洋省は本種を絶滅危惧種のリストに追加し、漁業規制を行う。生息地に関する規制も保護には不可欠だ。本種は、以前より過度ではないものの、未だに採捕が行われている(正しくは「もし水産海洋省が本種を絶滅危惧種のリストに追加したら、漁業はさらに管理されるだろう。本種にとって不可欠となる生息地も保護の対象となるだろう。」2016年2月2日修正)。ケベックの持続的開発・環境・気候変動撲滅省によると、サン・ローラン地域では、採捕が最重要視されている。当該地域では、64許可(年間110~130tまで採捕可能)が出ており、主に北欧へ出荷される。ケベック州は、250人の漁業者が、ウナギ漁が収入源であると見積もっている。採捕は主に、カムラスカ郡とリビエール・デュ・ルーで行われている。
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参考
2015年10月9日記事「米国、アメリカウナギを絶滅危惧種に指定せず。ワシントン条約への提案も見送りか」 
2015年7月22日記事「ニホンウナギとワシントン条約」

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