アメリカウナギの産卵回遊追跡に成功

ポップアップタグ(注)を利用して、アメリカウナギを産卵場であるサルガッソー海まで追跡することに、カナダの研究チームが成功。10月末のNature Communicationsで発表されました。
ニホンウナギの産卵場が特定され、天然の卵も採集されましたが、ニホンウナギを含め、ウナギ属魚類の産卵回遊ルートを追跡することに成功した例は今までありませんでした。発表された学術誌は、ニホンウナギの天然の卵の採集が報じられた雑誌ですね。

興味深いことは、この研究を含め、ポップアップタグを用いたウナギ属魚類の産卵回遊の追跡において、かなりの程度の個体が捕食されていることです。タグの影響(出血による捕食者の誘引や遊泳力の低下)も十分に考えられますが、産卵回遊の成功率を考えるための重要な知見になる可能性があります。

ウナギの生活史全体をモデル化することを考えたとき、孵化後に成育場にたどりつくまでの浮遊期間とともに、産卵回遊期の死亡率を知ることは、ほとんど不可能と考えられてきました。今回のような研究が進むことにより、ウナギの生活史全体への理解が深まれば、科学的な知見を元に、漁業管理を含めたウナギ属魚類の個体群管理を進めることが可能になっていくはずです。

注:魚体に取り付け、水深や水温、明るさを記録する装置。タイマーで切り離され、浮上して浮上ポイントと記録したデータを衛星を経由して研究者へ送る。

Béguer-Pon, Mélanie, et al. “Direct observations of American eels migrating across the continental shelf to the Sargasso Sea.” Nature communications 6 (2015).

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