ワシントン条約CoP17に対するEUの提案をどう解釈するべきか

2016年4月27日、EUは今年9月に開催されるワシントン条約第17回締約国会議(CoP17)に対し、ニホンウナギを含むウナギ属魚類全種の流通の現状や個体群動態の調査を行うことを提案しました。(なお、提案の内容、原文については、それぞれの記事をご覧下さい。作成でき次第、順次アップしていきます。、ワシントン条約の役割や、ニホンウナギが掲載された場合の影響等については、ここをご覧下さい。)

それでは、この提案はどのような意味を持っているでしょうか。

(1)まずは調査、次は規制
これが最も重要なメッセージと考えられます。EUは今回、すでに附属書IIに掲載されているヨーロッパウナギをのぞく、15種のウナギ属魚類を附属書に追加する提案は行いませんでした。提案されているのは、あくまで調査です。しかし、調査が提案されたことは、EUがウナギ属魚類の消費や流通の状況を現状のままで良いと考えてはいない、ということを示しています。調査の結果、やはり附属書に掲載し国際取引を規制する必要があると判断された場合は、2019年に開催される第18回締約国会議(CoP18)において、ウナギ属魚類全種の附属書への掲載が提案されることになるでしょう。

(2)分布域外の種であっても提案する
今回EUが発表した文書が強調していた点は、ウナギ流通がグローバルであることです。需要の中心は日本を含む東アジアにありますが、その強力な需要は世界中のウナギ属魚類に影響を及ぼします。このため、特定の種を取引の規制によって保護すると、満たされなくなった需要は別の種に向かいます。取引規制によるヨーロッパウナギの供給減が、アメリカウナギとビカーラ種の消費増大を招いたことが、例として挙げられています。このためEUは、全てのウナギ属魚類をまとめて管理すべきである、と主張しています。ワシントン条約における附属書掲載の変更提案は、当該種の分布域内の国がおもに行ってきました。しかし、分布域外の種であっても、包括的に管理すべき種のグループとして附属書への追加を提案することが、EUの主張によって正当化されます。

つぎに、いまやるべきことについて考えます。
立場によっては、今回のEUの提案について「ニホンウナギのワシントン条約附属書掲載を免れた」と捉える方もいるかもしれません。しかし、現実はむしろ、「詰まれた」状況ではないでしょうか。まず、今回の調査の提案によって、ニホンウナギを含むウナギ属魚類全種が、ワシントン条約における議論の俎上に上りました。さらに、EUの提案通りに調査が行われ、その結果が条約による規制が必要であることを示すものであったとき、締約国会議で附属書掲載に反論することができるでしょうか。現状を維持すれば、2019年の締約国会議でウナギ属魚類全種が附属書に掲載される可能性は非常に高くなるでしょう。
いまやるべきことは、附属書掲載を回避するための、形だけの対策ではなく、本当に持続可能な利用を実現するための実効力のある対策です。やるべきことは多々ありますが、ワシントン条約という文脈で考えたとき、日本が優先的に取り組まなければならないのは、シラスウナギ流通の正常化でしょう。一般に流通しているウナギの半分以上が違法な漁獲や流通を経たものであるという、異常な状態を即刻改善する必要があります。

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