英国では、一定規模の全ての取水施設に、ウナギの迷入を防ぐ「ウナギ・スクリーン」を設置することが義務付けられています。
テムズ川ウォルター取水口
テムズ川流域の上下水道を供給管理するテムズ・ウォーター社のウォルター取水口には、産卵のために河川を下る銀ウナギの迷入を防ぐため、Hydrolox社の「ウナギ・スクリーン」が設置されています。なんと、河川に直に接するスクリーンのメッシュが1.5 mmという細かさです。このスクリーンと、取水速度を毎秒25cmまで遅くすることで、ウナギを含む様々な生物の迷入を防いでいます。細かいメッシュには当然ゴミが付着し、目詰まりを起こしますが、スクリーン内外の水位差からゴミの付着を感知し、自動洗浄するシステムがついています。洗浄には、河川水をポンプアップして用います。
取水速度を抑えるため、旧来の取水口を拡大し、毎秒11m3の取水力を維持しています。ウォルター取水口の改築にかかった総費用は、7,000万円ほどということです。全額テムズ・ウォーター社が負担しています(最終的には水道代に添加されます)。
ウナギ・スクリーンの設置を定めた規則
ウナギ・スクリーンの設置は、英国環境庁がウナギの保護のために作成した規則(statutory instrument)によって定められています(規則へのリンクはこちらから)。2009年に定められ、2010年に施行された「The Eels (England and Wales) Regulations 2009」によると、イングランドとウェールズに存在する、24時間で20㎥以上取水するあらゆる取水施設が対象で、スクリーンの設置費用は全額施設管理者の負担とされています。
「The Eels (England and Wales) Regulations 2009」は、2007年にEUが設定した「establishing measures for the recovery of the stock of European eel」を根拠として定められました。
対策を進めるには根拠となる法律が必要
このような大規模な対策を進めることができている背景には、根拠となる明確な規則があります。今後ニホンウナギの保全と持続的利用を進めるにあたって、深く考えさせられる事例でした。